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ムクロジ

1月 ムクロジ

昔、お正月に羽根つきをすることは縁起が良いとされた。
お正月の女の子の羽子板遊びは、子供が蚊や害虫から伝染病にかからないように、トンボまたの名を縁起の良い勝虫に見立て、悪い虫を退治して守ってもらうことだそうです。
また、ムクロジは漢字で無患子と書くことから、子が患わ無いという願いが込められ、羽子板は厄を羽根返す、羽根のけるという事から縁起物として扱われていたようです。
羽根つきや羽子板は時代と共にいろいろな縁起かつぎが加えられ厄除けや無病息災の願いをこめられるようになったみたいです。

しかし、正月に羽根突きをしている家はほとんど見られなくなった。
当然、羽根突きの羽を見たことのない、知らない子供は多いと思う。
だから、羽根のお重りにムクロジの実が使われていたことは知るわけもない。
なぜ羽根突きの羽にムクロジの種が使われたのか。
適当な重さと大きさであること、板で叩いても割れない固さがあること、先が尖ったりせず球形であること、簡単かつ多量に収穫できることなど、羽の玉としての要件が、ムクロジに備わっていたからでしょう。

ムクロジは落葉高木で樹高15メートル、直径70センチに達する。樹幹は通直、樹皮は帯黄褐色でなめらかであるが、外皮は厚片となってはげ落ちる。日当たりのよい湿気のある所にはえる。四方に太い枝をのばし、全体に勇壮な樹形をつくる。
 日本では古くから人家に植栽された。庭園樹で、特に寺院によく植えられる。自然の樹形が保てるような広い場所に植えるのが望ましい。わが国のものは中国から入って植栽され、それが野生化したものという見解もある。

 葉は偶数羽状複葉の大形(40~70センチ)で互生する。小葉は8~16枚(4~8対)、長さ7~15センチで、その基部は左右不同の鋭形、短い小葉柄がある。葉は薄く革質で表面に光沢があり、葉脈は細脈まで両面に降起している。両面とも無毛で、全縁である。枝の下側に出た葉が大きく、上側の葉は小さい。

雌雄同株で、初夏(6月)に、枝の先に、雌雄別の多数の雌花および雄花と両性花を雑居する大形(20~30センチ)の円錐花序をつくる。
 花は小形の黄緑色で径4~5ミリほど、核果(果実)は球形で1.5~2センチ、10~11月頃黄褐色に熟し、黒色の種子は1センチほどの球形で、丸くて硬い。

名の由来には、漢名「無患子」(ムカンシ)は、患わない子の意で、羽子板が無病息災のお守りにされ、種子が羽根の球に使われた事に通じ、種子が黒い玉(黒子、黒い種)である連想からも、ムカンシから「ムクロジ」に転語したという説がある。

また、中国名 無患子 の由来は、『日本大百科全書』によると、『植物名実図考 長編』 (注:清朝末期・呉其濬著、初版1848年) の出典で、「昔、神巫がこの木で作った棒で鬼を殺したので、鬼を追い払い、患(ワザワ)いを無くすと伝えられたから」とある。

昔 ムクロジの果皮、種子、根や樹皮が、止血、解熱、咳止め、健胃、駆虫などの薬に使われたことによるものと思われる。
無患樹がムクロジを意味し、無患子はムクロジの種子のことになる。

ムクロジの実の数珠

お釈迦様の言葉に「もし、煩悩・業苦を滅し去ろうと欲するなら、ムクロジの実、百八個を貫き通して輪を作り、それを常に持って行住坐臥に渡って一心に佛法僧三宝の名を唱えてムクロジの実を一つ繰り、また唱えて実を一つ繰るということを繰り返しなさいそのようにするならば、煩悩・業苦が消滅し功徳が得られるであろう」と。
お釈迦様は手ずからムクロジ108個を繋いだ数珠をお作りになり 薬師如来・大日如来や十大弟子に配ったそうです。

ムクロジの果実の外皮は天然洗剤

『本草綱目啓蒙』(1803~1905年)という本があります。
これは江戸時代後期に小野蘭山が講義したものをまとめた博物誌です。
この本のムクロジの項に、果実の外皮を属にシャボンと呼ぶこと、そして、油に汚れた布を洗うために用いることが書かれています。

ムクロジの実が洗剤の効果をもつのは、サポニンという泡立ち物質を多量に含むためです。ムクロジの学名Sapindus mukorossiのうち前半のSapindusは“インドの石鹸”を意味し、後半のmukorossiは日本のムクロジそのものの名前です。
ちなみに英語ではChinese soapberry もしくは soap nut tree で、やはり石鹸の意味となっています。
かつては石鹸の代用とされたために井戸端などによく植えられました。
独特の甘酸っぱい匂いがあり、苦手と感じる方も多いかもしれませんがインドではリタと呼ばれ、日常的に洗濯や食器洗いに使っているそうです。
試しに使ってみたところ、普通に洗えて、匂いは殆ど気になりませんでした。

ムクロジの別名ソープナッツは、欧米でも究極のエコ洗剤として、オーガニックショップ・ナチュラルショップなどでは人気だとか 。

サポニンは水に溶かすと石けん(soap)のような泡を生ずることにちなんで命名された物質の総称。
起泡性、赤血球破壊作用(溶血作用)、魚毒性などの特性がある。

秋に果実の皮を集め、日干しにして乾燥させたものを延命皮(えんめいひ)と呼び、去痰(きょたん)、鎮咳(ちんがい)、強壮、利尿、肝障害に対する抑制効果、血糖値降下作用、抗HIV作用などの薬理作用が認められる。

江戸時代にはムクの皮と呼ばれ、石鹸として使われていたことが落語の世界で知る事ができます。

落語の茶の湯では、茶の湯の事を何も知らないご隠居さんが、小僧さんに知ったかぶって青きな粉を抹茶だと、でまかせを言って茶をたて、泡がたたないからとムクの皮の粉を入れて泡立てるという場面があります。
このムクというのはムクロジのことで、当時は石鹸代わりに使われていた事を伺い知る事ができます。
それで、どうなったかって?殺人的不味さなのにもかかわらず、見栄をはって「風流だ。」などと言って、なんちゃって茶道を続けたご隠居さんと小僧さんはムクロジの皮入りのデタラメなお茶を飲み続けた結果、トイレの住人となるほどに酷い下痢をして、げっそりしてしまいます。が、懲りません。
せっかく究めた泡裏千家?だから、人を招いて飲ませたくなります。
そこで、長屋の住人をターゲットにしぼり招待状を送りつけ…。
「知らない。」と言えないプライドのせいで、登場人物みんなが知ったかぶりを続け、奇妙きてれつな茶道の世界の泥沼にはまっていきます。つまらない見栄のせいで引っ込みがつかなくなった人間の姿を扱った、とてもおもしろいお噺 (はなし) なので興味のある方は聴いてみてください。

ムクロジ人形

私とムクロジのかかわりは10年ぐらい前、久宝寺緑地ヒーリングガーデナークラブ(公園案内ボランティア)の活動でムクロジ人形をメンバーから頂いたことに始まる。

昭和レトロの魔法瓶のようなユニークな形をしているムクロジの果実。
形もさることながら、半透明な質感はアールヌーボーのエミール ガレやドーム兄弟によるガラス工芸作品を彷彿とさせます。
実の外皮を半分に切り、その中の黒い丸い種子に付けた活目はとてもかわいく、とっても魅力的なムクロジ人形です。

ムクロジの子が患わない(無患子)語呂合わせから子のお守りストラップとして、
2~3年後御所市の一言主神社でムクロジの実を拾い、まねをして作った。

また、ヒーリングガーデナークラブの活動を久宝寺緑地から大泉緑地に移し活動を続けていた時、メンバーの女性がたまたま緑地内にムクロジの木を植栽されたので最近は手軽にムクロジの実が手に入るようになった。
植えられてから4~5年のさほど大きくない1本の木なのに毎年たくさんの実が出来る。
ムクロジの実は10月ぐらいから2月ぐらいまで少しずつ落下する。
ムクロジ人形を作るのはかなり手間がかかるので少しずつ採取できるのがうれしい。

ムクロジの種はおいしい?

このムクロジの種子は食べられるという事なので、完熟ムクロジの種子を選び、殻を割って仁の部分を食べてみました。
調理方法は素材の味がわかるようにシンプルにホイルの蒸し焼きと塩茹でで試してみました。
塩のみの素焼きにした場合は、大豆と栗の間の味と食感で香りはエノキタケを焼いた時の薄くした感じです。
塩茹でした場合は茹でピーナッツのようで、食べやすく美味しいです。
生の実をかじってみたところ少し粉っぽく、生の栗とよく似ていました。
感想ですがクセもなく普通のナッツとして食べられます。

このナッツの油脂は止血、解熱、咳止めなどの薬として用いられていたそうです。

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