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9月梓(あずさ)

9月 梓(あずさ)

中国の「梓」と日本で言う「あずさ」がそれぞれ違う樹木をさしていて、今では日本でもほとんど「あずさ」とは呼ばなくなったために、厳密には「あずさ」という和名の樹木はありません。

「梓」は先ほども述べた通り、どの樹の種類を指すかはっきりしていませんが、多くはノウゼンカズラ科のキササゲだといわれています。
漢字ができた当時の中国では、この「梓」が指す樹は非常に固く良質だとされ、建築や器具製作に広く用いられていました。
転じて、「梓」を取り扱う職人を「梓人(しじん)」と呼ぶようになり「建具師、大工の棟梁」を意味します。
中国では梓は「木王」と言い、百木の長として尊ばれ、そのため、天子の棺は梓の材で作られた。
また、その材木に文字や図面を彫って版木を作り、印刷や出版に使われたので、現在でも「本を出版すること」を「上梓(じょうし)」といいます。
「建築」や「出版」に使われる日常生活に欠かせないとても貴重な材木だったといえそうです。

梓この漢字の成り立ちはヘンの「木」とツクリの「辛」に分けられます。
梓の漢字から辛の意味を調べてみると「辛」は先が尖っていることを意味する漢字で、「木」と合わせることで「葉の先端が尖った樹木」を表し、「キササゲ」を指すようになったといわれていますとウェブにのっています。
しかし、辛の字を調べると、辛い=つらい=痛い の意味で先がとがっている意味は見当たらない。
また葉の先端のとがっていない木はきわめて少なく、ほとんどの木の葉は尖っている。

辛は新で、前日の庚の後をうけて、草木が粛然と自らを改めて新しいもの(実)に生まれかわることとある。
辛の字は、亠(なべぶた)と干と一から成り、亠は上を象(かたど)り、干は上を冒すことをいい、一は陽気を表します。
つまり、これまで下で醸成されてきた活力が、いろいろ圧力をはねのけて上に向かって噴出する形を表します。
辛は「つらい・からい」と読みます。
上・地上を冒すことに伴う痛み、つらさ、大変さ、を表しています。

このことから、日本で言う、梓は辛い木すなわちミズメやオノオレカンバを指すのが自然ではないかと思われます。
ミズメの樹皮はサロメチールの臭いがする。オノオレカンバの鋸屑は苦辛い。
昔からトゲの有る木、臭いの強い木、などは厄除け魔除けと信じられてきた。
薬になる木、雷を防ぐと伝わるキササゲやヤマグワ、これらが重要な場面で混同され解釈されて使われてきたと考えられる。

日本で言う「あずさ」は、正式名「ミズメ」であろうと言われる。

他にも、「キササゲ、アカメガシワ、オノオレカンバ、リンボク」などの樹を指すという説もあり、他にも地方では「アサダ、ナナカマド、ニシキギ」などがそう呼ばれることもあります。

古書を見ると、和漢三才図会(中国明代の図解書に日本の事物を加えたもの)や本草綱目(中国の代表的な本草”薬草などを記した書)に「梓」について記載されたものを、日本で解釈を付け加えるうちに用途や葉の形、薬効など似たような樹木が混同してしまったようです。
《本草和名》に〈梓白皮(略),一名楸,(略)和名阿都佐岐〉とあり,古くは梓・楸ともに〈アズサ〉と訓じたが,中国名の梓にあたる樹木はキササゲであり,楸は正しくはトウキササゲである。
したがって梓も楸も日本で古来いわれた〈アズサ〉にはあたらない。

梓弓
「梓巫女“あずさみこ”の儀式」に使われた「梓弓」の材料の樹種はカバノキ科との説明が多い。
源為朝が使った強弓の「梓弓」のほか、儀式ではイチイ(一位…アイヌ民族は弓実用にも使用)、マユミ(檀・真弓)、実用的なものではイタヤカエデ(板屋楓)、ヤマクワ(山桑)などが使われ、儀式と実用性は使用目的によって樹種が異なってきたようだ。
現在、岩手県下閉伊郡岩泉町や九戸郡山形町(現久慈市)などではオノオレカンバ(カバノキ科)のことを「アンサ(又はアンチャ)」と言う。
全国的には、旧下野日光地方で「ホンアズサ」、ミネバリ(旧常陸久慈郡、下野日光)、ヤマダテ(旧陸中水澤)などと呼ばれた。
貴重種アンサ(斧折れ樺)は多用途に使われ、ミズメと共通の用途が多く、ホンアズサの呼称もあるように「アズサ」と名がつく木は貴重種である。ミズメもオノオレカンバも重く硬く木目も似る。

日本国皇室でお選びになった、皇太子殿下、浩宮様の(お印)は“梓”(あずさ)ですがこれは“キササゲ”が当てはまります。
その証拠は、皇太子殿下と妃殿下雅子様のご結婚十周年記念硬貨の台紙には「キササゲの花」と雅子様のお印「ハマナスの花」が印されています。

2019年5月1日の新天皇即位に伴って記念硬貨が発行されることになった。
硬貨の裏面には菊花紋章と天皇、皇后陛下の「お印」の梓(あずさ)とハナナスがデザインされている。
今回の記念硬貨の梓(あずさ)の柄はキササゲではなくミズメのように思えます。
記念硬貨のデザイン

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