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7月アカガシ

7月 アカガシ

カシ類の中でアカガシは私にはあまりなじみのないカシであった。
とにかく、自生を見たことがなかったのと造園木としてほとんど使わない木なので名前しか知らなかった。

最近、木の実を使ったクラフトを作っている。一番多いのはドングリを使ったストラップで年間50~60個ぐらいつくる。
それから派生して木の枝にストラップをつり下げた壁掛けなども作った。
木の枝の代わりに機織り機で使う杼を使ってみた。
杼は骨董市で手に入れたもの、手になじんだ木製の民芸品といった感じで興味をもって買った。

それで杼のことについて調べてみた。
京都西陣で唯一、杼を製作している「長谷川杼製作所」の話。
杼は織り機の用具の一つです。
縦糸が開口している間に横糸を通すために使う木製の舟形の道具でシャトルともいいます。舟形の中央部をくりぬいて、管に巻いた横糸をはめ込み、縦糸の中をくぐらせて織り進みます。
杼の材料はみっちり目が詰まった九州産の「赤樫」という木材で、土蔵で十年から二十年の間乾燥させた柾目板の部分を使って作ります。
しかしなかなか手に入らないため、祇園祭の山鉾が修理される時に車輪の部分に使われている赤樫を頼んで分けてもらいます。

やっと、アカガシと関わりが出来た。

ついでに祇園祭の山鉾の車輪についても調べてみた。
直径一メートル八十五センチ、幅十八センチの菊水鉾の車輪は、全体が赤樫(かし)でできており「轂(こしき)」と呼ばれる車輪の芯(しん)部分は、直径六十センチぐらいの欅(けやき)の赤身で、樹齢約百五十年以上のものだ。
材料となるアカガシは樹齢300年ほどで、最低でも直径75cm以上あるもの。
丸太で調達された材料は、100×30×21cmの四角柱に切り出され、最低でも3年、理想的には5年かけて天然乾燥させる。
カシもアカガシが望ましいが、最近では原木が不足しておりシラカシで代用する場合も多いという。
木を探すこと、乾燥させる木の養生と保管、伝統的な工法での製作とすべてが大変な仕事だ。
また、寸法の面でも、近年は上記の条件を満たす大木が減り、材料の確保が難しくなりつつある。

アカガシは宮城県・新潟県以西~九州の山地に生える。
アカガシは比較的常緑樹が好む温暖な気候の場所だけではなく、ある程度の寒い地方にもその生息が知られている。
常緑樹には珍しく寒い地方にも適応できたのは、冬の寒さの中でも冬芽や葉が凍りにくいからだといわれている。
高さ約20m、直径80cmほどになる。
樹皮は緑灰黒色。ふつう皮目は目立たない。老木になると割れ目が目立つ。
本年枝には淡褐色の軟毛が密生するが、翌年には落ちる。2年目以降の枝は黒紫色で、円形の皮目がある。
葉は互生。葉身は長さ7~15cm、幅3~5cmの長楕円形で、やや硬い革質。左右は不ぞろい。先端は長く尖り、基部は広いくさび形。
ふつう全縁だが、ときに上半部に波状の鋸歯があるものがある。両面ともはじめ褐色の軟毛が密生するが、のちに無毛になる。表面は深緑色で光沢があり、裏面は淡緑色。葉を乾燥させると赤褐色になる。
果実は堅果。長さ2cmほどの卵球形。1年目はごく小さく、2年目の夏から急に成長し、秋に成熟する。殻斗には鱗片が合着した同心円上の環が10個ほど並び、褐色の軟毛がある。 花期は5~6月。
冬芽は楕円形で細い絹毛がある

昔から建築材をはじめ舟,特に櫓や櫂,荷車特にその車輪など,堅くて強いことが必要な用途に用いられていた。
中でも木刀や三味線のさおは,赤くて重みのあるところから賞用されてきた。
アカガシの木刀は定番商品。
鉋(かんな)の台や鑿(のみ)などの道具の柄には最高といわれる。

特殊用途が注目される重くて堅くて強い材であるアカガシ。
アカガシに限ったことではありませんが、カシ類が建築で多く用いられるところに、「込み栓」があります。
木材同士の接合や嵌合の際につなぎ合わせの部材としてや、接合部の締め合わせ、そして地震などの時の木材の性能を十分に発揮できるようにするための「めり込み力」をひきだすための「堅い中の柔軟性」が「込み栓」の持ち味です。
現在の建築の多くは、木材同士を接合する時には金属製の金物を多く使用しますが、「込み栓」は昔からの木材同士の接合や嵌合にとても重要な役割を果たすものです。
もし、これがカシ類以外の樹種であれば、つなぎ合わせた当初はしっかりとはまるものの、その真価を発揮するべき時には摩擦力や圧縮力などの外的要因で接合部よりも先に破壊されてしまい、接合の力が出にくくなってしまいます。
木材同士の接合や嵌合で大切なのは、「粘り」です。
圧倒的な強度ではなく、じわじわと粘る強さ。
だからいきなり壊れることなく、ゆっくりと衝撃などの力を吸収しながら耐えるのが木材のいいところで、カシ類の込み栓は外的要因による力がかかった接合部において、接合材同士の粘る力を引き出す「めり込み」に耐える強度をもっていて、木材同士がめり込んでいくことで突然の破壊を防いでくれる役割を担っています。
堅く強い中にも柔軟性と弾力性がある木材がカシ類なのです。

道具の柄には、カシ類が使われることはよく知られていますが、その中でも微妙に使い分けがあります。
その一つに「かけや」があります、大きな木の金づちみたいなこの道具の頭にはアカガシ、柄にはシラカシが使われることが多くみられます。
それは、衝撃が伝わっても割れにくいからだといわれています。
堅いけれども柔らか。そんな不思議な感覚を昔の人は感じとっていたのでしょうか。

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