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5月バラ

5月バラ

花の女王バラの話は古い時代から有り余るほど語られている。
なぜこんなに人気があるのだろうか、特に女性はバラには特別の感情を持っているように思える。
樹形は作りづらく、あばれ、枝には鋭い刺があるというのに。

花の中でもバラは人間とのかかわりが深く、遠く紀元前まで遡ります。
古代バビロニア遺跡からはバラが彫られたレリーフが発見され、人類最古の宮殿の一つ、クレタ島クノッソス宮殿では最古のバラのフラスコ画がみられました。

ギリシャ神話には、美の女神アフロディーテ(ヴィーナス)が誕生した際、大地が「同じくらい美しいもの」といって生み出したのがバラの花で美しさを象徴する花となりました。

当初バラには香りが無く、アフロディーテの息子エロス(キューピット)のくちづけによってその香りが生まれたとも言われている。また、アフロディーテが軍神アレスと浮気をしているところをエロスに目撃されたとき、アフロディーテは沈黙の神に頼んで息子の口を封じてもらったと言われる。その秘密が守られたお礼にと沈黙の神に贈られたのが赤いバラだったという伝説から、ヨーロッパでは「バラの下で」との慣用句が生まれたと言われている。

秘密は「バラの下で」
ローマ帝国の末期には、バラを天井からつるした宴会では、その下で交わされた話は一切秘密にしようという風習が生まれました。その後、「バラの下で」(sub rosa)というと「秘密に」という意味となり、現在でも「バラの下で」(英語では(under the rose)という慣用句は、ローマ時代と同じ意味になっています。

古代エジプトの女王クレオパトラもバラ好きであったようで、バラを浮かべた香水風呂に毎日入り、廊下にはバラの花を敷き詰めるなど、アロマセラピーとして活用していたようだ。特にアントニウスを迎えた際は宮殿全体をバラで飾り、廊下にはバラの花弁を20cmほど敷き詰めたと言われている。

初期のキリスト教では、バラは異教のヴィーナス信仰に結びつく、性的魅力を象徴するイメージがあり、不道徳なものと考えられていた。
このためローマでは、修道院で薬草として栽培されるにとどまった。
しかし、ローマ帝国の崩壊後は次第に聖母マリアに結び付けられるようになり、白いバラは純潔を、赤いバラは殉教を表すようになった。白いバラはユリと共に聖母マリアを象徴する植物とされ、祈りの際に使う「ロザリオ」の名もこれにちなむとされる。

ヨーロッパでは、11世紀からの十字軍遠征(13世紀までの間に7回遠征)、16世紀の大航海時代到来などにより、小アジアやパレスチナなどから数多くの野生種のバラ(ガリカ・ローズ、ダマスク・ローズ、キャベジ・ローズ、アルバ・ローズなど)を持ち帰り東西のバラを交配しての品種改良が盛んに行われた。現在オールド・ローズと呼ばれる品種はこの頃に次々と作り出されていった。また、イギリスで1455年から30年続いたランカスター家とヨーク家の戦争では、ランカスター家が赤いバラを、ヨーク家が白いバラを紋章としていたためにバラ戦争と呼ばれた。その結果、ランカスター派のヘンリー(7世)が王位の座に付き、ヨーク家のエリザベス(1世)を妃として迎え、長年の争いの終結を表して両家の紋章を組み合わせたチューダーローズ【Tutor Rose】を紋章としたチューダー朝が始まることとなった。

18世紀に中国からヨーロッパへ伝わった四季咲き性のバラ(ロサ・シネンシス:中国名、月季花)は西洋バラと交配され、それまで一季咲きしかなかったヨーロッパのバラの世界を一新した。芳香が強く花弁が多い大輪の四季咲き性ばらが生まれた。

バラの栽培技術も発達し、19世紀には新品種が続々と作り出された。これに大きく貢献したのがフランス皇帝ナポレオン1世の皇后ジョセフィーヌ(Josefine:洗礼名はローズ)。ジョセフィーヌは「バラのパトロン」とも呼ばれ、数多くの植物学者や園芸家を集めてバラの研究を援助した。1801年にはパリ郊外のマリメゾン離宮に1,800ヘクタールのバラ園を作り、世界中から集めた当時のバラ2,500種をコレクションしたと言われる。また、このバラ園で働いていたアンドレ・デュポンは、世界で初めて人工交雑によって新しいバラを作出したとされる。人工受粉による育種の技術が確立されたことにより、近縁種間の交雑で花形、色、香り、四季咲き性などバラの遺伝的な性質に革命的な変化が生じ、この時期よりも前のバラを「オールド・ローズ」、それ以後のバラを「モダン・ローズ」と称することとなった。

オールドローズ(O:Old Rose)
1867年に四季咲き大輪のハイブリッドティーが人工交雑によって初めて育成されたので、 この時期までに作られていました原種、シュラブローズなどを「オールドローズ」と総称しています。 代表的な系統はR.ガリカ、アルバ、ダマセナ、センチフォリア、ブルボンローズ、HP種などです。 一季咲きで、花の色彩も限られているので一般的に豪華さはありませんが、モダンローズにはない、繊細で優雅な姿や花の色、豊かな香りがある。

イングリッシュローズ(E:English Rose)
英国のD.Austineが育成し、1969年に初めて発表したオールドローズタイプのモダンローズの総称。優雅な花形や芳しい香りを漂わすオールドローズに、 モダンローズの四季咲き性や多彩な花の形や、色を導入して育成した新しいタイプのバラで、現在、100以上の品種が発表されている。

ハイブリッド・ティー系(HT:Hybrid Tea)
樹形は直立から半直立状になり、高さは1.5m以上に達する。四季咲き大輪で、花の直径が15cm以上になるのも珍しくない。 ふつう、一本の茎に一つの花をつけ、剣弁高芯咲きが多い。多くの品種があり、花色も豊富である。

フロリバンダ系(FL:Floribunda Rose)
横方向に伸びる性質が強く、樹高はせいぜい1m。花の直径が10cm前後の中輪で四季咲きのモダンローズ。 花数は多く、一本の茎に多数の花が房になって咲く。

ミニチュアローズ(MIN:Miniature Rose)
矮性で樹高は15-40cmで花の直径も2cm程度のものが多い。四季咲き小輪バラで一茎に沢山の花を房状に咲かせる。

つるバラ(CL:Climbing Rose)
「クライミング」、あるいは「クライミングローズ」ともいわれ、数メートルに達するつる性の枝を多数発生させる。 アーチやフェンスにからませて楽しむ。花の大きさは様々で大、中、小輪があり、開花期も一季咲き、四季咲きがある。

バラの花の名前の由来は、「茨・荊・棘(いばら)」の「い」が抜けた語。
イバラは「うばら」「うまら」「むばら」とも言い、イバラもウバラも、ノバラやカラタチなど刺のある小さな花木の総称であったが、バラは西洋バラを指すことが多くなった。
漢字の「薔薇は」は中国語から入り、音読みで「そうび」や「しょうび」と読まれ、古今和歌集では「そうび」と詠われている。

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