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4月タブノキ

4月タブノキ

タブノキは本州~九州の暖かい沿海地に生育する常緑広葉樹でクスノキ科の高木である。
タブノキはスダジイなどともに各地に大きな老木がみられ、暖帯の海岸付近の極相林を構成する代表的な常緑広葉樹である。樹高15~20メートル、直径1メートルに達する。
西日本では内陸にも見られるが、沿海地の肥沃な沖積地に立派なタブ林を形成する。
耐陰性、耐潮性、耐風性が強いので、海岸近くの防風・防潮樹に適する。

わが国に生育する常緑広葉樹は落葉広葉樹に比較して、耐陰性が強く、萌芽性があり、群生をつくりやすい。したがって、常緑広葉樹林の育成には、苗木を植栽(人工更新)するよりは、これらの特性を活かした切株から萌芽させる萌芽更新が適している。

タブノキの葉は互生し、枝の先端に集まってつき、縁には鋸歯がない長楕円形、革質で厚く、光沢がある
葉は長さ6~15センチ、葉柄2~3センチ、若葉は一般に紅く美しい。
葉の裏面は白みを帯びているが、無毛である。

枝は太く、横に張り、側枝が主軸よりも長く伸張する仮軸分枝を繰り返すので、全体として豪壮な傘状の樹冠を形成する。幹は淡褐色~褐色で平滑。
同じ常緑広葉樹であるアカガシなどの多くのカシの仲間は、枝先に数個の芽がかたまってつくが、タブノキは枝先に大きな芽をただ1個つける。大きな特徴でタブノキを同定するときのポイントの一つである。

4~5月、新葉とともに、小枝の先に黄緑色で6弁の小花を多数、円錐状につける。果実は平たい球形で、6~7月に黒紫色に熟す。種子は鳥散布。

タブノキは漢字では「椨」と書く。日本ではクスに「楠」を用いているが、中国ではタブノキ類が「楠」である。
 
名前の由来
古代からの木のようで,万葉集の大伴家持の歌、「磯の上の都万麻を見れば根を延へて年深からし神さびにけり」の都万麻(つまま)はタブノキだと言われている。
これは意訳すると、(磯の上にそびえ立つタブノキは根を深く広げて年数が経ちなんと神々しいものだ)というものです。
もともとタブノキというのは、霊が宿る木とされていて、古代では信仰の対象となり、祖先はその樹霊を尊び大切にしてきた。
それが霊(タマ)の木であり、それが  タモ、タブ、タブノキと変化したとも考えられている。
また、材は古くから船材に適し、昔、朝鮮半島から日本に渡来した船は、すべてタブノキの材で造られた。
朝鮮語で丸木舟をトンバイtong-baiといい、丸木舟を作る木の意味から転化してタブとなったともいわれる。

タブノキの樹皮はタンニンを多く含むため、黄八丈の染料として、また以前は漁網の染色に使われた。
八丈島の名の由来とも言われる黄八丈については室町時代から絹を貢いでいた記録があり、江戸時代の中期以後から現代にも通用する粋な縦縞、格子縞が織られるようになった。
そして、その生地を染めるのには、すべて島に自然に生えている植物性の天然染料を用いている。そして、天然染料を煎じた液で数十回染色した後、黄色や茶色はツバキやサカキの木を焼いた灰で作った液につけ、また黒色は鉄分を含んだ沼の泥をこした水につけ、糸を染めている。
この天然染料に、古くから「タブノキ」(島ではマダミと呼ばれる)の樹皮も利用してきた。
黄八丈の色は、黄色を主として、樺(茶)色、黒とありますが、樺色の染料にはタブノキを利用します。

線香はスギの葉の粉末にしたものが主原料で、これを固めるために昔は天然の粘着物を用いていたが、その1つとしてタブノキの樹皮がある。
現代でも、タブノキの樹皮は昔からたぶ皮と呼ばれ、高級な線香として、乾燥し粉末にしたものをジンコウやビャクダン、チョウジといった各種の香木の粘着剤として使われる。

タブノキはイヌグスとも呼ばれ、クスノキよりも低くみられがちであるが、材は硬く、かつては建築の土台・鉄道の枕木に使われた。
現在でも 家具・美術品の彫刻・楽器などに使われる、有用な樹種である。

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