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3月椿

3月椿

木偏に春で椿、まさに春の盛りを現わす花木です。
日本の国花はサクラですが、日本を代表する花木と言えばツバキです。

ツバキの分布は本州・四国・九州のほぼ全域にわたり、海岸から標高800mぐらいまで生育しており、人々の生活域と重複しています。

ツバキは伊豆大島や九州五島列島のツバキの原生林、お寺や日本庭園での銘椿、茶席での生花といろいろな顔を持っています。 古くは神聖視され、やがて茶人に好まれ、海外にも広まった。

豊臣秀吉は茶の湯に椿を好んで用い、冬の炉の季節には茶席が椿一色となることから「茶花の女王」と言われる。

江戸時代は2代将軍徳川秀忠が椿を好み、烏丸光広、林羅山が『百椿図』を描き、絵画、彫刻、工芸品に椿の絵柄が定着した。また、ツバキの栽培も一般化し多くの園芸品種が作られた。

ヨーロッパには17世紀にオランダ商館のエンゲルベルト・ケンぺルが著書で紹介し、18世紀にイエズス会のゲオルク・ヨーゼフ・カメルが種を持ち帰った。
後、植物学者リンネがカメルにちなんで椿にカメル、ケンぺルの記載に基づきジャポニカの名前を付けた。
19世紀には広く流行し、小説やオペラで有名な『椿姫』では主人公の好きな花として知られる。
冬でも常緑で日陰でも美しい花を咲かせるため大変人気となり、そして何千種もの園芸品種が作られ、世界中に愛される花となった。

しかし、都会のツバキの花マニヤが派手な品種に飽きた果てにたどりつく、深味のある花はやはり原種のヤブツバキです。

ツバキの語源のいろいろ
「唾(つばき)の神」が宿る木の意。
古代、大和・三輪山麓の海石榴市(つばきち)はツバキの生い茂る歌垣の地であった。 歌垣の男女の交わした約束事に「唾の神」が現れ、木々に憑依(ひょうい・のりうつる)すると信じられたところから、その木がツバキと呼ばれた。

他にツヨバキ(強葉木)のヨの省略、アツバキ(厚葉木)のアの省略、ツバキ(光沢木)、ジュバキ(寿葉木)の転訛、ツヤバキ(艶葉木)のヤの省略、テルバキ(光葉木)の省略転訛、ツブラキ(円木)の省略転訛、ツバキ(鍔木)の意味等がある。

日本酒の醸造には木灰が必要で、ツバキの木灰が最高とされている。

種麹製造業者は酒造用種麹(もやしと呼ばれている)の製造に木灰を用いるが、特に椿がよく檪、椎、樫、栗などいわゆる照葉樹林の木灰が良いとされている。
木灰を添加することは,蒸煮米をアルカリ性にして雑菌の繁殖を防ぐ、
表面の粘り気を無くし微量の金属を含むため胞子の形勢が良くなる、
できた胞子の貯蔵性がよくなると言われる。
木灰の原料として採取する椿は、樹齢100~300年ほどの木が良いとされる。
幹   年数10~13年  直径2~3寸  高さ1~3間
切株 年数100~300年  直径0.7~1.5尺  高さ1~5尺
この方法は我が国独自のものであり、中国などにその例を見ることはない。

また、アルミニウムを多く含むことから、古くは染色用にも用いられた。
しかし、ツバキが少ないため、灰の入手は難しい。

ツバキとことわざ

【大椿之寿(だいちんのじゅ)】
長寿のたとえ。 
「大椿」は伝説上の大木。八千年を春とし、八千年を秋として、人間の 三万二千年がそれの一年にあたるという。
転じて、人の長寿を祝う言葉。
出典は、『荘子(そうじ)』逍遥遊(しょうようゆう)「上古に大椿なる者有り 。八千年を以もって春と為なし、八千年を以て秋と為す」
表現としては、「大椿の寿を祝う」、「大椿の寿を保つ」など。

【椿萱並茂(ちんけんへいも)】
父母がともに健在なことのたとえ。 
「椿」は長寿の木で父を指す。「萱」はわすれ草で、母を指す。「並茂」は並んで繁茂する意。「椿萱ちんけん並ならび茂しげる」と訓読する。
表現としては、「椿萱並茂の幸せ」
同じ意味の言葉としては、椿庭萱堂(ちんていけんどう)などがある。

【ツバキのつぼみが葉の上に出ている年は小雪】
【ツバキのつぼみが葉の陰にできる年は大雪】

いずれにしてもツバキのつぼみの着き方により、冬の雪の降りかたを予想。

ツバキのつぼみが葉の上に出ているというのは、いつもの年よりも葉の成長がよくなく、つぼみが目立つ時。
またつぼみが葉の陰になっているというのは葉の成長のよい時。

葉の成長の悪い時には小雪となり、葉の成長のよい時には大雪となるという意味です。
ツバキの葉の成長の悪い時というのは、夏から秋にかけて干ばつで、気温の低かった年が、秋に強い台風にしばしば襲われた年と見てよいようです。
いいかえれば夏から秋にかけて太平洋方面の高気圧の勢力が強く、大陸の高気圧の勢力の弱い年です。
こうしたパターンには持続性があるので、冬にも大陸の高気圧があまり発達しないで寒気弱く小雪の年が多いようです。

「花椿」は春の季語であるが、「寒椿」「冬椿」は冬の季語。

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