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3月ハルニレ

3月 ハルニレ
ハルニレの分布は本州、四国、九州の日本全土から、樺太、朝鮮半島、東シベリ アの温帯、中国へと広がっている。
谷筋、扇状地、斜面下部で良く成長し、渓畔の肥沃地で、明るい場所にしばしば純林が成立する。
近年は、ニレの巨木を見ることも少なくなっているが、堂々と枝を広げ、高さ30 m、胸高直径1mにもなる落葉の高木である。
一般にニレとして親しまれ、単にニレといった時はハルニレをさす。洋名、エルムも知られている。
北海道の低地に多く、春の新芽の多さが喜ばれる。北大の構内にはハルニレの大径木があって、エルムの学園ともいう。

3~4月頃に帯紫淡緑色の花を咲かせるのでハルニレという。
これに対し、本州では秋に花が咲くものをアキニレという。
同じニレ属の中には 良く似た材で、ややくすんだ白色系のオヒョウニレがある。

葉は互生で、先端は急にとがる。縁は二重の鋸歯があり、左右は不同でやや厚くざらつく。同じニレ科のオヒョウの葉は先が分裂しているので見分けがつく。

花は3~5月、新葉に先立って帯黄緑色の小細花(両性花)を7~15個束生するが、目立たない。

種子(5~6ミリ)は6~7月に成熟する。2~3年ごとに多量に結実する。小さい種子の回りに膜質の翼(翼果)がある。
 
ハルニレの樹皮は灰褐色で縦に不整の裂け目がある。コルク層が発達しやすい。
ハルニレの樹皮をはがすとぬるぬるしている。
樹皮をはぐとぬるぬるするので、ニレの名は「滑(ぬ)れ」に由来するといわれる。

丈夫な和紙は、コウゾ、ミツマタを原料として手漉き作業で作られるが、漉き作業の過程でノリウツギなどの植物から採った粘液(ネリ)を混入して水にねばりを与え、繊維が均一状態で浮遊しやすいようにする。
近年は主として畑に栽培したトロロアオイから採っているが、以前は野生のノリウツギやハルニレ、アキニレなどの内皮から採っていた。
樹液にはクワガタや蝶、スズメバチなどの昆虫が集まる。
 
ハルニレは木材として賞用され、日本での主産地は北海道である。
木理は直通で肌目は粗く、強靭な材で割れ難く、切削などの加工はやや困難である。
気乾比重は0.42~0.63(平均)~0.71でやや重硬な木材で、保存性は低いと言える。
ニレの材は、心材と辺材の境目は明らかであり、心材はくすんだ褐色で、淡黄緑 色を織りなすものもある。環孔材で、大きな道管が並ぶための年輪ははっきりして いる。
材面はざらつき、仕上げ材面の光沢は少なくないが、割れにくく、粘りのあるのも 特長である。

歌に折り込まれ、その木は知らなくてもなつかしさを呼ぶ木があるが、ニレ(エルム)もまたそのひとつであろう。
大ヒットしたご存知、舟木一夫の「高校三年生」の歌い出しで、♪あかい夕陽が校舎を染めて ニレの木陰に沈むころ ああ~ はよく知られている。

また、ニレノキ(楡の木)からはもの悲しさを感じる。
これは 堀辰雄「楡の家」、北杜男「楡家の人々」、中原中也の詩「木陰」、舟木一夫の「高校三年生」に共通している。
「楡家の人々」では楡家の三代にわたる没落と悲劇を描いているが、楡という名に意味があり最後まで読んだが、ついに主人公の金沢甚作がなぜ、楡(楡基一郎)という名に改名したかわからない。
海外ではアメリカの劇作家オニールの「楡の木陰の欲望」や最近では「エルム街の悪夢」などもあり、どちらも明るい、楽しいとは縁遠い。
ケネディが凶弾に倒れたのもダラスのエルム通りだ。

しかし、最近ではニレの木は一般の人にもなじみが深くなっている。
北海道でも観光名所の木として紹介される道東の豊頃町のハルニレの木は有名。
多くの人が写真集や雑誌、カタログなどで草原の中で美しい樹形を見せる一本の樹は印象深い。

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ハルニレは北海道で立派な大木になるので、アイヌと縁が深く、多くの逸話が残されている。アイヌの伝説で、雷神が美貌(びぼう)のハルニレ姫の上に落ちて、人間の祖先のアイヌラックルが生まれたという。
ハルニレを暖炉で燃やすと、火力は弱いが、他の木が燃え尽きても、消えることなく、ほそぼそと燃えながらえている。薪としては長時間火を維持する。
そのような性質のため山火事が発生し、雨で他の木が消えても、楡の木の火はなかなか消えず、地元では消火用の道具の中には鋸も用意されている。
アイヌの人々は火を熾す場合にもこの木を利用していた。普通、火起こし器は錐と臼では異なる樹種を使うのだが、ここでは両方とも楡が使われていた。
樹皮は繊維が強く、アイヌの人は縄や衣服、鞄などを作って利用した。

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