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12月ヒマラヤスギ

12月 ヒマラヤスギ

常緑針葉樹の高木で、日本では樹高20~30メートル、直径1メートルになる。
ヒマラヤ杉という名前からはスギの仲間と思いがちだがマツの仲間である。葉のつきかたはカラマツに似ており、1本、1本の葉はたしかにマツの葉だ。
マツの仲間なのになぜ杉の名がついたのか。
英語のHimalayan Cedarを日本語に訳すときにCedarを杉としたらしいのだが、
英語のcedarの語が植物学的な分類と一致しない使われ方をしていることが原因でマツの仲間であるにもかかわらずスギの名前がついてしまった。

ヒマラヤスギの自生地はヒマラヤ西部~アフガニスタン東部の標高1100メートル以上のところに分布している。自生地では樹高50メートル、直径3メートルに達し、寿命も長く、300年以上も生きる。
日のよく当たる環境を好む陽樹で、枝は水平もしくはやや斜め下に向かって伸び、葉は針状で短い枝には束になって付く。
秋になると雄花と雌花を咲かせ、その後やや長い卵形の淡い緑色した果実(球果)を枝の上に直立してつける。
端正で優美な円錐形の樹冠なので、世界の三大庭園樹(コウヤマキ、ナンヨウスギ、ヒマラヤスギ)のひとつとされる。
 
日本には明治12年ごろ渡来したといわれている。
ジャパン・ヘラルド社のイギリス人ヘンリ-・ブルックが、インドのカルカッタからヒマラヤスギの種子を輸入し、山手居留地一帯に植えたのが日本で始めてのヒマラヤスギである。
インドがイギリスの植民地だった頃から、ヒマラヤスギは形の美しさから庭園の木として、人気があり、取り寄せをしていた。
その後、わが国では北海道以外で広く適応し、成長もよいので、たくさんの苗木に育ち、皇居に献上されたり、新宿御苑をはじめとした、公園樹として全国に広がっていった。
しかし、1965年代(昭和40年)に入るころから、ヒマラヤスギは、大きくて邪魔だと言う理由から、また根張りは浅いため強風に弱く、台風などで倒れやすいため、伐採が進み、どんどん減ってしまった。

ヒマラヤスギは樹脂分を多く含むため、耐朽性があり、病虫害に強く、シロアリにも強い。しかし、大気汚染(亜硫酸ガス)にやや弱く、潮風に弱い。防火性、耐火性も弱い。

ヒマラヤスギの枝葉や幹は特有な香りをもつ樹脂を含み、平素より香りをもつ揮発性物質を発散させ、バクテリアやカビなどを排除するフィトンチッド(植物自己防衛物質)による抗菌作用が知られている。油分には薬効があり、アロマセラピーで利用される。

一般にシダーとよばれる仲間は、「神聖な木」とみなされた。かつてユダヤの人々は男子が産まれると家の前にシダーを、女子が産まれるとモミを植える習慣があり、子供が成長し、将来必要になる家具を作るのに備えたという。
かつて日本でも女子が生まれると、キリを植えていた風習に似ている。

日本では材を利用することはすくないが、原産地ではすぐれた建築材として有用だそうである。
ニューヨークのビル屋上のまるい貯水タンクは知る人ぞ知るニューヨーク名物だが、タンクはヒマラヤ杉の材で作られており、水もれしない。
気候による温度差に耐えるという利点があるそうだ。

エルサレムのソロモン神殿建設やノアの箱船に使用され、権力と長寿の象徴として美術や文学にしばしば現れる。この樹から得られたシダー油は古代エジプトでミイラの保存に用いられた。 

シダーローズ(ヒマラヤスギの果実)
ヒマラヤ杉の開花期は10~11月。受粉して球果ができるのは翌年の10~11月。
それから成熟するのに一年。
雌花は小さくて高いところに上向きにつくので、観察が困難と言われています。
しかも、樹齢30年を超えないと雌花(開花時は約5mm)を付けず、数も雄花に比べずっと少ない。
ヒマラヤ杉の球果は、成熟すると種子の入った種子鱗片(しゅしりんぺん)、種鱗(しゅりん)が球果の軸から離れ、離散する。
自然界では、ヒマラヤ杉の実(球果)の鱗片の隙間にある種は風に飛ばされ、鱗片は重たいのでパラパラとヒマラヤスギの根元に落ちる。
球果の先端は、バラバラにならずそのまま落ちる。これが『シダーローズ(Cedar rose)』です。採取時期は、11月末~1月末ごろです。

シダーローズは木の実のリース作りの素材としては最高の物。こんなきれいな形の果実は他に知らない。

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