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11月ハゼノキ

11月 ハゼノキ

落葉の高木で樹高10メートル、直径は30センチに達するが、多くは5~10センチ。
ハゼノキは琉球から導入されたので、別名「リュウキュウハゼ」と呼ばれ、関東以西の温暖な低地・丘陵地に広く野生化している。
葉は奇数羽状複葉で、肉厚でかたく、全体が無毛である。枝条は太く粗生し、斜めにやや直線的に伸び、横広の樹形になる。

ウルシ属の果実は、中果皮に脂肪分を含み、野生生物、特にツグミ、ヒヨドリなどの野鳥の食餌植物としても重要な役割を果たしている。種子はかたい内果皮に守られているので、鳥に食べられることによって、種子に傷がつき、発芽しやすくなる。ウルシ属の果実は褐色系で、鳥にとって色彩的にはまったく目立たない。
ハゼノキの果実の成熟は10月以降で、果実の脂肪分は成熟後の日数の経過とともに増加する。脂肪が増加した時に一斉に食べられる。
落葉後でも果実は長い間食べられずに残っており、完熟しても落ちないので、種子がそれほど目立つ必要がなく、野鳥も果実に脂がのるのを待ってから食べる。
ハゼノキは平均してほぼ隔年に豊作年があり、豊作年が連続することもある。
年による豊凶の差が大きく、凶作年の結実量は豊作年の10~20%である。
豊凶が規則的でないことから、前年の花芽形成時の気象の影響が大きいものと思われる。また、開花後約1カ月間に大部分の果実は離落し、成熟時の自然結実率は20~30%になるという報告がある。この原因として、未受粉と虫害によると推定されている。

和ろうそくなどの原料の木ロウはハゼノキやウルシ、ナンキンハゼ(トウダイグサ科)の果実からとる油脂から作る。
木ロウは脂肪酸のグリセライドで、成分的には厳密に言えばロウでなく、融点の高い(53℃)油脂に属する。

木ロウは化学的には油脂であるが、外観から木ロウと呼ばれている。
この木ロウは、パラフィンワックスや他のワックスにない独特の粘りを持ち、 食品衛生法に適した安全性をもっており、我々の生活の中に数多く使用されている。
化粧品の口紅、ハンドクリーム、軟膏、座薬、クレヨン、色鉛筆、塗料、お相撲さん のビン付け油(整髪料)等に広く使われている。
そして最近では、トナー、インクリボンCD等OA機器にも使われる。
また、天然材料の良さを活かしてシックハウス症候群対策としても良いコーティング剤が開発されている。
木蝋はジャパンワックス(Japan wax)と呼ばれてヨーロッパ、アメリカにずっと輸出が続いている。

木ロウはわが国だけの特産物であること、また最近の自然品の見直し気運などから木ロウの需要が増えてきている。
ところが、この貴重で利用価値の高い木ロウが、近年絶滅の危機にあります。
(1)数年前に九州地区を襲った大型台風の被害で、産地のハゼの木が根こそぎ倒された。
(2)一大産地である長崎県千本木地区を襲った大火砕流。
(3)ハゼの実を採取してくれる『ちぎり子さん』の減少等です。

和ろうそく
 
ロウソクは、古くはハチからとれる蜜蝋などを材料にしてつくられ、紀元前からギリシャやローマにあったことがわかっている。
日本では仏教の伝来とともに中国から蜜蝋のロウソクが貴重品として輸入され、奈良朝時代には使用されていた。

ハゼノキから木ロウを得る製法は室町時代に中国から伝えられ、江戸時代になって、特に四国や九州の各藩や和歌山藩など、主に暖かい西南地域でハゼノキの植林が盛んに行われた。

ハゼは琉球から九州に渡り品種改良された日本特有の植物で、現在では九州地方で採取されるが、年々その数は少なくなっている。

木を傷付けると、翌年以降実がならなくなるため、7mぐらいある木に長いはしごを掛けて、木を痛ませないように、ひとつひとつ手でちぎって収穫する。

ハゼノキはかなり寿命の長い樹で、木ロウ採取の最盛期の40年生頃になると、1本当り100キロ程度の果実が生産される。果実100キロから約20キロ(20%)の木ロウが採取され、80キロのしぼり粕が得られる。
しぼり粕は久留米絣の染料となる藍の瓶の加温に利用され、バイオマス資源の有効利用である。

櫨の木は11月から12月頃に実をつけ、12月から1月ごろに収穫される。
和ろうそくの蝋の原料は櫨(ハゼ)の木の実の外殻から生成した油脂分です。
正確にはハゼの木の実の外殻を冷暗所に数ヶ月から1,2年保管し、その外殻を蒸して圧搾します。
絞って抽出した油脂分からごみや不純物をろ過、分離して精製したものを木蝋(もくろう)といいます。
この方法は、圧搾法というが、現在ではほとんど行われておらず、ヘキサンなどの溶媒による抽出法が主となっています。
また精製の過程で、日光に晒すと白く変化します。
日光に晒していないものを生蝋(きろう)、日光に晒して白くなった蝋を晒し蝋(さらしろう)や白蝋(はくろう)といいます。

和ろうそくの製造方法は、この生蝋をロウソクの芯に塗って干し、これを何度も繰り返して、一本一本を手で作る 『清浄生掛け(しょうじょうきがけ)』と、型に流して作る『型流し』があります。
和ろうそくの種類は、大きく分けて2つ。「棒型」と、型の部分が広がった「いかり型」です。

またろうそくは、重さで区別します。 一匁(匁・もんめ・は約3.75グラム)でおよそ30分、 五匁で1時間半ほど燃えつづけます。

明治時代の終わりごろになると、パラフィンと動植物性のステアリン酸などを材料にした西洋ロウソクが普及し、値段も安く、しかも明るいので、和ロウソクの生産量は次第に減少しました。

しかし、近年、100%植物性、天然素材を使用した和ろうそくは、すすが少ない、ロウがこぼれ落ちない、風に強い、消えにくい、完全燃焼する、風がなくても、炎が変わるなど良い特性があり、インテリアとしての『和の灯り』として確実に見直されています。

木場作(こばさく)

わが国はおよそ600年以上のハゼノキ栽培の歴史をもっており、栽培技術も発達し、ロウ質の良否や収量の多少などから多数の品種が作り出され、50余種が育成されていた。代表的な品種は突然変異個体または枝変わりのつぎ木増殖によって得られた。

雄株は果実がとれないので、一般の木ロウをとるためのハゼノキ苗木も優良品種の特性を守るために、実生でなく雌株の接木で増殖されてきた。
ハゼノキの集団植栽の場合、果実を多くつけさせるためには、表面積を大きく樹冠を半円球にする必要がある。一般には10アール当たり30本内外を植栽する。ハゼ同士の樹冠の接触が始まるまで、およそ10年以上かかるので、その間、植栽間で農作物を栽培する。ハゼの木の間作作物としては、オオムギ、カンショ、ナタネ、サトイモ、ソバ、ラッキョウ、コンニャクなどがつくられていた。

このように、苗木を植えこみ、植栽木が成長して庇陰により耕作不能になるまでソバ、豆類、サツマイモ等を栽培することを木場作(こばさく)という。
木場作は、下刈りの手間がはぶけること、また作物に施肥するため植栽木の生長も良いという利点がある。
以前、わが国では、各地の民家に近い伐採跡地や山武(さんぶ 千葉県)、木頭(きとう 徳島県)、飫肥(おび 鹿児島県)などのスギの有名林業地などで木場作が盛んに行われていた。
林地に農業、園芸、畜産、水産を組み入れた土地利用を、現在ではアグロフォレストリー(agroforestry:混農林)という。
各国に伝統的にあったもので、木場作はまさにアグロフォレストリーである。

わが国では木場作は衰退したが、裸地にすると養分・有機物が減少するので、地力維持の難しい所、侵食されやすい所、熱帯など作物栽培に樹木による保護が必要な所などで再認識されてきている。
アグロフォレストリーは、必ずしも農業の生産性を最大にするための手段ではなく、土地を多面的に利用する技術であり、しかも長期間にわたっての土地の生産性を維持できる。
近年、熱帯林ではアグロフォレストリーが注目されているが、日本では、昔から行っていたのである。

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