11月ナンキンハゼ
11月ナンキンハゼ
ナンキンハゼは街路樹や公園樹として多く植えられており、名前は知らなくても樹は見たことはあると思います。
とくに都会では紅葉のきれいな木として知られ、葉の形の面白さと複雑な赤・黄・紫・緑のグラデーションは目を引き印象的です。
しかし、ナンキンハゼはごく普通に見かける木でありながら山の中を歩いていてこの木が自然に生えているのに出会うことはありません。
それはこの木が中国の山東省、広東省、雲南省に自生する木だからです。
でも、日本の鮮新世や洪積世の地層から種子の化石が見られるのでかつては日本に自生していたことがわかります。
また、奈良公園では鹿が食べないので幼樹のナンキンハゼの個体が多く見られ、野生化しています。
これは誰かが植えたものでなく、鳥によって種子散布が行われたことによります。
黒褐色の果皮(殻)に包まれた果実は秋になるとぱっくり割れ、中から白い種子が出てきます。
落葉期、ちょうど年末の頃、枝いっぱいに白い種をつけた様子も白い星のように見えいいものです。
脂肪分を含む実は高いカロリーを持っているので冬の鳥たちの餌になります。ハトが啄ばむのをよく見ます。
この脂肪は良質で40%の高い歩留まりで油がとれ、ローソクを作ったり、石鹸や頭髪油、潤滑油等幅広く利用されるそうです。
ローソクができるならば、この実はよく燃えるだろうと1個の種のロウ質に火をつけると10秒ほど小さな炎を出しよく燃えました。
種子の数が多いと大きな炎をあげ、勢いよく燃えるのでやらないでください。
ロウを採る木としては日本ではハゼノキが和ろうそくの原料として有名です。
ナンキンハゼ(南京黄櫨)の名前は「南京(ナンキン)」=中国の都市=中国原産のロウを採る木から名付けられました。
また、ナンキンは他に「珍奇」「小さくて可愛い」という意味もあるので、素晴らしい紅葉、毛虫のような穂の花、星のような白い実を指すのかもしれません。
毛虫のような花とは7月、狐のしっぽのような花序を、たくさん上を向いてぴんぴん出てきます。
風に吹かれると上向きの花序がさわさわ揺れ、ムーミンのにょろにょろのようでかわいく思えます。
また、葉からは染料が採れ、生葉を2~3時間煮出した液で染めるとカーキ色、黒褐色となり、退色しにくい。
漢方では根皮の乾燥したものを烏臼(うきゅう)と呼ばれ、利尿剤や潟下剤として利用されます。