11月カツラ
11月 カツラ
大泉緑地のカキツバタ園に1本の樹形の美しいカツラがある。
大泉緑地HGCのO嬢はカツラの木は良いにおいがすると言う。
私はまったく香りに気がつかなかったので、生返事をしていた。
私にとってカツラの木は葉の形と薄黄色の紅葉がもっとも好ましい。
北海道旭川、美瑛川のほとりの氷点の舞台となった見本林で見たカツラの葉が今でも一番印象に残っている。
カツラ科カツラ属。落葉高木。
北海道から九州まで分布していますが、北に行くほど多く、 北海道や本州中部の山地にたくさん生育している。
カツラはほぼ日本固有の樹種であり、その新緑の葉の美しさから 公園や並木でもよく見られる。 水分の多い肥沃な土地を好むので、渓流沿い等 によく生える。
高さ30~35m、直径2mにもなる。
樹皮は暗灰褐色。若木では平滑で、横長の皮目が目立 つ。老木では、縦に裂け、薄片状に剥離する。
葉は2回に分けて展開する。最初に、長枝に2枚(対生)の葉を、短 枝に1枚の葉が開葉する。
その葉形はハート型に似た円形が特徴的で、春葉という。
その後に開葉する葉はハートの凹みがないおむすびのような形をしており、夏葉という。
葉を順次展開していくため、開葉期間は長い。
秋には黄色く紅葉する。
かつらは「香の木」という別名もあり、香りがあることで知られている。
カツラの葉の甘い香りについてはもちろん古くから知られていて、これに因んだ呼称もあり、おこーのき(岩手:九戸・下閉伊・紫波)、こーのき(宮城、新潟、長野:北安曇)、しょーゆのき(山形:飽海・北村山、岡山:備中)、まっこ(秋田:仙北)、まっこのき(青森:弘前市)、まっこーのき(青森:南津軽)、まっこのき(青森:津軽、秋田:北秋田・南秋田)などと呼ばれる(日本植物方言集成)という。
このカツラのにおいは、いままでの良い匂いとか悪いにおいとかとも違い、不思議な匂いである。
その香りは醤油せんべいのにおいと少々の甘い香りがあるといわれる。
カツラの葉の甘い香りは、黄葉の時期に落葉のマットができた状態で、一雨降った後の雨上がりが一番強く感じられると思われる。
この芳香成分については高石らの研究で「マルトール maltol 」によるものであることが既に明らかになっている。
マルトール自体は砂糖を含む菓子等の製造過程で生成される甘い匂いを持つ物質とされ、要はキャラメルの匂いと同じである。
カツラのにおいは、しばしばキャラメルのような匂いともいわれるが、正にそのとおりである。
マルトールは食品産業では甘みや風味を増強する効果を有する添加物(エンハンサー)として広く利用されている。マルトールは焦がした麦芽(モルト)に見いだされ、名称はこれに由来している。
材質は、広葉樹にしては比較的軟らかい方で加工もしやすく、狂いも少ない方である。
木口(樹の横断面)から見ると、辺材は樹白色、心材 (樹の中心部分)は褐色と大変区別しやすい材である。
板目(樹の横断面)から 見ると、やさしい肌目の木だということがわかり、木理は通直で節も少ない木である。
昔は張り板や裁縫板がどの家にもあって、今となっては身近な現物で確認のしようがないが、カツラは張り板として最適で、裁縫板としても最上とされたホオノキの代替とされたという。
洗濯板は現在でも一部に生存していて、ブナやサクラの製品を見るが、木材の工藝的利用によればカツラが適材であったという。
また、引き出しの側板も典型的な用途であったが、現在ではシナノキ(合板を含む)、ジェルトン、アガチス等々で、カツラの利用はほとんど目にしなくなった。
カツラは素直で加工性のよい材といった印象があり、中でも北海道は日高産の赤味のあるカツラは評価が高く、「日高の緋ガツラ」として伝説的な呼称が残っている。
大きな材が得られることから仏像にも多く用いられ東北地方の仏像はカツラ材を使ったものも多い。
しかし、現在目にするものは定番の碁盤、将棋盤のほかは彫刻用材、版画板としてホオノキと並んで販売されているのを見る程度となってしまった。
中国で言う「桂」はモクセイ(木犀)のことであって、日本と韓国では古くか らカツラと混同されている。「桂花酒」はキンモクセイの花を乾燥したものを酒に漬けたものである。
桂皮(シナモン)は、同じ桂の字を使うがクスノキ科の異種の樹皮である。
京都に加茂神社という 神社があり、ここは、春の葵祭りで全国的に有名です。
この葵祭りでは、葵草を祭りのおみこしや衣装に飾るのでそう呼ばれているが、桂の枝葉も同じように この祭りに用いられる。
桂のことを別名カモカツラと呼ぶゆえんでもある。
加茂神社では葵草を神草としているが、同じ京都の日吉大社と松尾大社では 桂を神木として扱い、葵と桂を飾る祭りをする。
葵は加茂神社の女の神様を表わし、 桂は日吉と松尾の男の神様を象徴しており、この2人の神が結ばれたという神話 に基づいて、これらの祭りに葵と桂を飾るとの事である。