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11月イチョウ

11月 イチョウ

朝日新聞のbeランキングであなたの好きな木という記事を見た。

1位はサクラ。2位にイチョウが入っていた。

大阪では御堂筋のイチョウが有名だし、奈良御所市の一言主神社のイチョウの黄葉の写真を何回か撮りに行ったことを思い出した。

一言主神社

一言主神社

一言主神社

あわてて、旬の樹木のリストに挙げることにした。

イチョウは裸子植物(針葉樹)の落葉高木で、高さ25メートル、直径100~150センチになる。イチョウの仲間は中生代(約3億年から7千万年前)の地層から多数発見されており、恐竜の栄えた時代の後期に優占した植物群であった。

現存するものはイチョウのみで、1属1種の植物である。1種ゆえ「生きている化石」とも言われ、裸子植物の中では最古のモノのひとつとされる。

中国が原産とされているが、自生地は確認されていない。
成長が早く、寿命が長い。陽地を好み、乾燥、刈込みに強い。
深根性で耐寒性も強いが、潮害に弱い。
燃えにくいため、防火樹として寺社仏閣のよく植えられ、巨木になったものも多く見られる。

イチョウの語源
「イチョウ」という発音の源は中国語にある。
中国では宋の時代、アヒルの足のことを「鴨脚」と書き「ヤーチャオ」と発音した。
中国南部ではこれを「イーチャオ」と発音し、鎌倉時代に日本に伝わったとみられる。イチョウの名は水かきを持ったアヒルの足に由来している。

葉は互生、長枝につく葉は疎生し、ほぼ扇型で、短枝につく葉は叢生し、尖状の中央が深く切れ込んだ2翼が多い。切れ込みの変異は多い。幅は5~7センチで、有柄の波状葉である。幹は灰色~灰褐色で、縦に不規則に裂ける。

雄株と雌株の見分け方
葉の先がはっきり割れているのが雌株、割れていないのが雄株。
また大きくなったイチョウの木なら、雄株の木は大枝が鋭角に上に伸び、葉が密集した短い枝をつけた長枝が 大枝から上方向にのびる。これに対し雌株の枝は全体的に横に枝を伸ばすという説が聞かれる。

そもそもイチョウの雌雄の見分け方はあるのか、ギンナンの結実について研究・調査している岡山県農林水産総合センター森林研究所の話では

「雄の木と雌の木の見分け方は、正直なところ、ありません。確実には開花時期に雄花か雌花か、『花』を見ないとわかりません」ということです。

雌雄異株で雄花は短枝の先に穂状について垂れ下がり、雌花は短枝の先から出て、長い柄の先が2つに分かれ、その先に胚珠がついている。
花の種類が確認できるまでは、イチョウの性はわからない。

イチョウの花粉は、雄花から風で運ばれ、雌の木の雌花の先に分布される粘液に付着する。普通の植物では、付着した花粉は花粉管を伸ばして、精核が卵細胞に到達し、受精がおこる。

イチョウの場合、胚珠に取り込まれた花粉は胚珠の上部にある花粉室の中で4ヶ月間、そのままで維持される。その間に花粉を閉じ込めた胚珠は直径約2センチの種子に成長する。花粉室の花粉は、2個の精子をつくり、10月の初め精子が花粉室の液体の中を泳いで、造卵器に入り、受精が起こる。4月の受粉から、9月の受精を経て、種子が成熟し、翌年春の発芽まで14ヶ月かかる。イチョウの精子が発見されるまで、花の咲く植物の受精は全て、運動性のない精核の移動によっておこると考えられていた。

イチョウは他の樹木にみられない特異な性状をもっている。その1つとして、幹や枝から乳柱(気根状)をたらす乳(ちち)がある。軟らかい細胞の組織に多量のでんぷんを含んでいる。発生の理由についてはまだ明らかにされていない。

種子が奇形的に葉に生じる(葉に実がつく)ものをオハツキ(お葉付き)イチョウ、葉縁がくっついて葉がラッパ状になったラッパイチョウなどの奇形がある。また、イチョウの葉は、葉柄の根元からどれが主脈かわからない数多くの葉脈が扇状に開いている。これらも原始的な樹木の特徴を示している

銀杏は白色(銀)で小さい杏に似ていることから、また、中国では公(祖父)が植えてから孫になって実を食べる樹(実がなるまで長年月を有すること)であることから公孫樹という。でも、実がなるまで十数年である。

ギンナンは直径2~2.5センチの球形、外種皮は黄色く熟し、粘液に富む肉質で特有の臭気があり、かぶれることがある。白くかたい内種皮に包まれた胚乳を銀杏といい、食用にする。種子は落下時には、発芽能力はなく、次の年の春に発芽する。

これまでイチョウには胚乳を食用とする以外に格別の用途はなかったが、最近、葉のエキスがヨーロッパを中心に医薬品として承認されている。
日本では健康食品として商品化されている。

現在では、老化により生じる動脈硬化、肺病、痴呆、アルツハイマー病などに効果があるとされ、イチョウ葉エキスの生物活性と含有成分の分析が盛んになされている。

中国では、薬用のために多量のイチョウが栽培されている。
薬用には若い木の葉が有効とされている。
葉を採取することを目的に、挿し木栽培がなされている。

以前、栞として本にイチョウの葉を挟んでいたが、これは紙魚(紙を食べる虫)よけのためである。

一般に、葉が紅葉するのは、秋に葉中の細胞液中に紅色色素のアンソシアニンが生成されるからである。秋になると、葉柄の基部に葉を落とすための離層ができるので、光合成で生産された炭水化物が葉中に蓄積され、これからアンソシアニンが形成される。

また、黄葉の場合は、秋になって葉の生活力が衰え、葉緑素中のタンパク質が分解され、退色し、その結果、葉緑素中に含まれていた黄色色素のカロチノイドの色が現れる。
しかし、イチョウのように濃い黄色の場合、葉緑素中のカロチノイドだけでなく、秋に葉中にカロチノイドが生成されるためといわれている。

デザイン・シンボルとしてのイチョウ
様々な家紋の意匠をはじめ、有名なところでは東京大学の校章や東京都のシンボル旗にイチョウの葉がデザインされている。身近では野菜の「イチョウ切り」や、力士が結う「大銀杏」がある。工芸品や文学の題材となるなど、日本の文化に深く根ざした樹木と言える。

材木としてのイチョウ
生長が早くて木目と肌がキレイで加工しやすいので、将棋の盤や駒、鉢、お盆、まな板、仏具、彫刻、細工物、床板など様々な形で利用される。植物学的には独特の特長がある樹ですが、材質はマツやスギに似ており、木材としては針葉樹材として扱われる。

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