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10月ムクノキ

10月 ムクノキ

樹高15~20メートル、直径1メートルに達する。幹は比較的通直であるが、幹の上半から太い枝が開出し円い大きな樹冠を広げ、箒状型の雄大な樹形である。風に強く、防風の効果も大きいので、公園等に植えられる。

樹皮は暗褐色で、幹には縦に通るみぞ状の深いくぼみがある。大木ではケヤキと同じように短冊状に薄くはげ落ちる。
樹皮は樹齢と共に皮目に浅い縦筋が現われ、老木となると表面の薄層が剥がれる。 樹齢が長く、各地で国の天然記念物や御神木となっている。

根は深根性で板根を形成する。板根は熱帯林やマングローブ林に多くみられる根の形態で、根が幹の基部からひだ状に肥大し、三角形の支持板を当てたようになっている。

本州の関東以西、四国、九州の平地に生育、特に静岡県、愛知県、滋賀県、京都および大阪以西で多く、海の近い所に比較的多い。山地では暖帯林の中腹以下のゆるい傾斜で、肥沃な深い土壌の場所によく生育する。
暖帯の向陽適潤地の二次林の雑木林などで、エノキ、ケヤキ、ヤマザクラ、イヌシデなどとよく混生している。
雌雄同株の落葉高木。葉は長楕円形の単葉で互生、縁には三角状の鋭い鋸歯がある。葉質はやや薄く、葉の大きさは長さ4~10センチ、幅2~6センチ。葉先は尾状に尖る。葉の基部は広くくさび型、葉脈は基部で3主脈に分かれる。中央脈に7~8対の側脈。葉の裏表に荒い毛が密生しておりざらつく。
 
4~5月に若葉と同時に開花、淡緑色の小さな雄花が新しい枝の下部に集散花序をつくる。雌花は新しい枝の上部の葉腋に1~2個つく。
果実は10月に成熟、卵状球形で、直径7~8ミリ。
緑色の果実はまだ成熟しておらず、成熟すると黒紫色や黒色になる。果実は成熟した後に鳥によって食餌される必要がある。緑色や赤色の果実の中で黒色が目立つので(二色効果)、鳥は成熟した果実のみを食べる。果肉は干し柿の甘さに似ており、昔は子供たちは喜んで食べた。
ムクノキは毎年結実し果実をムクドリ、ヒヨドリ、オナガがよく食べるので、鳥によって種子が人家の近い庭園や公園に広く散布される。

葉はケヤキやエノキと似ているが、表面に剛毛があり、さわるとザラザラする。
このザラザラ感は、単に剛毛があるだけではない。葉には炭酸石灰が多く含まれているため、ざらついている。葉の表面がケイ酸質、つまり石英やガラスの主成分である。

日陰で乾燥させた葉は鋭いヤスリのようになり、しかも目が細かいので、これほど上等な研磨剤は他にない。
象牙、べっ甲、角細工や漆器の木地を磨くのに使われていた。
木賊(とくさ、研草の意)で磨くよりも細かく仕上がる。
木材を磨くためなくてはならないものであった。
昔は鉋をかけた材木に鮫皮やトクサで荒磨きをしたうえ、さらにムクノキの葉で仕上げた。
自然のサンドペーパーなのだ。爪の先をなめらかにすることも出来るのだという。

材は散孔材で心材は黄褐色、辺材は淡黄色であるが、心材と辺材の境界は明らかでない。割れにくく、靱性が強く、強靱な材は主に器具材や工具の柄などの道具材、三味線などの楽器材、天秤棒、餅つきの杵や船舶の用材ほか建材にも使われた。
枝は海苔そだに利用していた。

ムクノキの語源は色々の説がある。
① 「ムクノキ」という名前の由来は、良く茂る木の意味「茂くの木」である。
② 新葉には、細かい粗い毛が密生している「ムク毛」から。
③ 葉は珪酸を含みザラザラしている。この葉を乾燥したもので、木や竹・骨・角の器物の表面を磨きはがす。この物をはぎとる意の『ムク(剥)』から。
④ 古来、日本人は心身のケガレを忌み、ケガレを擦りおとし、無垢な心をもつこと考え、『無垢の木(ムクノキ)』から。
⑤ 老木になると樹皮がはげてくるので、ムクノキ(剥くの木)、「むき剥ぐ木」から。
⑥ 実をムクドリが好んで食べることから「ムクノキ」となった。
⑦ 木工用に使われるので「木工(もく)」などに由来する。

ざらざらする葉の裏面を使って物を磨いたり,皮を剥いだりしたことから,「磨くの木」が転訛してムクノキになったのが名の由来の定説である。

ムクノキとエノキ
「椋になっても木は榎」という諺がある。これは強情な様子を示したもので、ムクノキの幼木が育って大きくなり、明らかにムクノキだと分かるようになっても、最初にエノキだと見立てた人は最後までエノキだと言い張る様をいう。
ムクノキは老木になると幹に穴(洞)が開きやすく、奇怪な形の幹になるものが多い。こうした特徴はエノキやケヤキにはほとんど見られないため、見分ける際の手掛かりになる。
もっとも簡単な見分け方は、葉の表面で自分の爪を磨いてみることである。既述のとおりムクノキの葉はザラザラしており、爪を磨くことができるが、エノキはツルツルしていて爪磨きにはならない。
また、秋であれば両者の実の違いで区別できる。できはじめのエノキの実は緑、赤、黄色が入り混じってカラフルになるが、ムクノキの実は緑、黒、褐色と一貫して地味であるが、直径は1センチ前後で、エノキよりも明らかに大きい。
樹皮は白っぽくて平滑で縦筋が入ることが多いが,老木になると縦に裂けて剥がれてくる。葉はややエノキに似ているが,特徴をつかめばそうでもない。
鋸歯が上半分にしかなく側脈が葉縁まで届かないエノキに比べて,ムクノキは鋸歯が基部まであり,側脈は途中で分岐しながら葉縁まで届いている。
どちらも基部3脈が特徴ではあるが,ひと回りほどムクノキの葉の方が大きいように感じる。

椋鳥考
ムクドリ。漢字は椋鳥。名前の由来はムクの実を好んで食べることからと言われるが、「群来鳥(ムレキドリ)」・「群木鳥(ムレキドリ)」からくる語源が正しいようです。
群れて来ることが多く、トビなどのように単独行動はまずありません。
集団で餌場を見つけては移動しています。
鳴き声もかなり大きめで「ギョー、ギィー」と決して可愛いらしい声ではないです。

ムクドリは椋鳥か? 
結論から言ってしまえばムクドリは椋鳥ではないと思われる。
実は榎の鳥ではないかと言われる。
調べてみると、ムクドリはムクノキよりとエノキとは非常に相性がいい。
秋になるとエノキの実が熟して、ムクドリがさかんに食べる。
町中でも電線にムクドリの群れがとまるところでは、下にフンが溜まる。
フンといってもほとんど種子や皮ばかりで、これがたいていエノキなのだ。
エノキはムクドリがよくばらまくせいか、発芽しやすいのか、幼樹があちこちに見かける。
それに対してムクノキはめずらしいというほどではないが、少ない。
高さ10メートル以上の大木になり、ケヤキのような樹形を作り、実もたくさんつけるのだが、タイミングが悪いせいか、ムクドリが食べに来ているところは見たことがない。
ムクノキにムクドリが来たのも見たことがない、よく見るのはヒヨドリ、イカル、シメなど。
ただ梢は高い位置にあるので、鳴かないと鳥が来ていることに気がつかないことが多い。
エノキはそれに対して、比較的低い位置から枝が横へ張るので小鳥が来ていれば気づきやすい。

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