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8月うるし

8月 うるし

幹は直立し高さ10メートル、直径40センチに達する落葉小高木、中国およびインドが原産地で、ウルシを採取するために各地に栽培されている。
肥沃地で、日当たりよく、適潤またはやや湿気の多い山麓、丘陵帯や山地帯で栽培されていて、野生化していることも多い。
枝分かれはまばらで、枝は太い。粗樹皮は灰色で暗褐色の横の皮目が目立つ。
葉は枝先に互生し、奇数羽状複葉で長さ30~60センチと大きく、小葉は縁にぎざぎざがない全縁、7~15枚で、側脈は7~12対で斜上する。葉柄と葉えき(葉のつけ根)に短毛が密にある。
雌雄異株。花期は5~6月、枝の先の方の葉えきから長さ30センチほどの円錐花序を出して黄緑色の小さい花をたくさんつける。
9~10月に6~8ミリの果実が熟し、花序は垂れ下がる。果実(核果)はゆがんだ球形、淡黄色で光沢がある。果実(中果皮)から木蝋(モクロウ パルミチン酸を主成分とする油肪)を採る。
果実は冬期になってもかなりの間、樹上に着生している。
種子は堅く、そのままでは播種しても吸水が難しいので、濃硫酸などに浸漬(しんせき)し、発芽処理を行う。

漆は「採る」ではなく、「掻く」といいます。
「漆を掻く」とは「漆の木から樹液を採取すること」を意味しています。
掻子(かきこ)と呼ばれる職人が、樹液を採るためにカンナを用いて漆の木の幹に一文字に刃物で傷をつけていきます。
すると、(人間の血液のように)木は傷の修復をしようと樹液(漆)を傷口に流します。
それを掻子がヘラで「掻き取って」採取します。
不思議なことに、1本の木に対して5日に1回のペースで作業を行うと、もっともよく樹液を出してくれるそうです。
また、木を切り圧縮機にかけて「漆」を絞るよりも、傷をつけて地道に採取するほうが多くの量を取ることができます。
作業は6月はじめから9月いっぱいぐらいまで行われますが、採取できる樹液の量は、1本の木から牛乳瓶1本分(約200グラム)しか取れません。

うるしの木の幹につけた傷口からしみ出てくる乳白色の樹液。それが麗しい光沢を放ち、堅牢な塗料になることを、日本人は9千年も昔から知っていました。
人が初めてウルシを利用したのは、接着剤としてだと言われていますが、縄文時代の遺物には、すでに美しい漆塗りが見られます。

ウルシの木の樹液である「漆」。
「うるわし」を語源にするとも言われています。

「漆」という漢字のなかに、木と水と人という文字が隠されていることも、人と漆の関わりを象徴しているかのようです。
江戸時代から大正時代頃までは、ウルシの実に含まれるロウ分から蝋燭や鬢付け油を作りました。
また、ウルシの木材は水を吸収しにくいために魚網用の浮きとしても使われ、ウルシは余すところなく生活に役立てられました。

漆掻きの方法には2種類あります。

木に刃物で傷をつけて漆を採取する方法は同じなのですが、
日本では江戸時代、現在でも中国、ベトナムなどでは、漆とともに実も採取するため、木を弱らせない「養生掻き」という掻き方行われています。
「養生掻き」は1年のうち6月から8月の2ヶ月間のみ採取し、毎年採取する方法です。

やがて明治になって、実の需要は減り、漆の需要が高まると、福井県の「越前衆」と呼ばれる漆掻き職人たちが「殺し掻き」と言う手法を見いだしました。
「殺し掻き」は6月から9月、さらに11月にも木に傷をつけ、1本の木から1年ですべての漆を採取し尽くし、その後は樹幹を伐採すると言う現在行われている方法です。

うるしを掻く手順
辺付け
漆掻きのシーズンは、入梅から初冬までの約半年間。
漆を掻いていく面を決め、幹に印をつける「辺付け」作業から始まる。
見立ては職人の経験が頼り。
ウルシ掻き
6~7月に採れる漆を「初漆」、8月は「盛り漆」、9月は「末漆」と呼ぶ。
乾きや水分量、香りなどが異なるため、出荷の際にも区別する。
なかでも、「盛り漆」はウルシオールの含有率が最も高く、最高の品質を誇る。
裏目掻き
「殺し掻き」に特有の作業が「裏目掻き」と「止め掻き」。これまで傷をつけていなかった部分に深く傷をつけて最後の一滴まで大切に採っていく。
枝掻き
伐採した枝を20日間ほど水に浸し、それから枝に傷をつけ、にじみ出てくる漆を採る。今では枝掻きをする職人は少ない。
貯蔵
採取した漆はその日のうちに漆樽に移し替え、乾かないように表面に油紙を密着させて貯蔵する。

漆掻き職人によって採取された漆は、ゴミを取り除いただけでも使えますが、多くの場合、光沢や粘度を調整するための精製作業が行われます。
まず、「ナヤシ」と呼ぶ撹拌作業で成分を均一化して粒子を細かくし、さらに熱を加えながら行う「クロメ」という撹拌作業で、余分な水分を取り除きます。

漆は「乾燥」ではなく、酵素の働きで「固化」します。つまり成分が相互に作用し、化学変化を起こすことによって塗面が堅牢になり、お湯はもちろんのこと、アルコール類、アルカリ類、酸などへの抵抗性を持つようになるのです。

漆の成分は、一般的な国産の「盛り漆」の場合、ウルシオールが70~75パーセント、水分が20~25パーセント、ゴム質・含窒素物が数パーセントです。

人間の手で漆の木を伐採したあと、実は、また人間の手によって新たに栽培されています。
播種法(種を蒔いて苗木をつくる)、分根法(根を分けてそれを育てて苗木をつくる)、萌芽更新法(伐採した切株から出る芽を育てる)の3種類があり、日本では播種法が行われています。
漆の木は生命力が強く11月後半に伐採され、切株になっても次の年の春には、新しい芽をだします。

現在発見されている最古のウルシの遺物は1万年以上にさかのぼると言われています。縄文時代の草創期です。
ペンキや接着剤のなかった時代には漆はとても貴重なものでした。一本の木から採れる量はたった200ccにすぎないので、奈良時代から国が保護をして育ててきました。
江戸時代には、参勤交代の将軍様の献上品として各藩がそれぞれ独自の漆工芸を奨励して、日本全国に漆工芸品の産地が広がりました。

漆は湿度で乾燥すると言われていますが、これは水分の力を借り酸素を取り込んで硬化するのです。
漆の主成分はウルシオールですが、硬化する際に働くのがラッカーゼという酸化酵素です。
自身の体が傷ついたときに、空気中の酸素を取り入れ、ウルシオールの固まる作用の触媒として働きます。
一度固まった漆の塗膜は強固で空気中の酸素は入りこめず、結果腐食を防ぎます。
また酸やアルカリにも強い性質をもっています。
漆の弱点は紫外線です。

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